発達障害とは?

  • 2019年12月27日
  • 2020年3月11日
  • 用語集
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発達障害者支援法においては「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

もう少し違う言葉で表現しますと、親の育て方、教育のしかた、友人関係などの後天的な環境が原因ではなく、先天的な要因による脳内の情報処理・制御能力の偏りが起こす発達のアンバランスさが日常生活で困難を引き起こす障害のことです。 このアンバランスさは、幼少期の発達過程で明らかになってきます。

得意なことと不得意なことのアンバランスさは誰にでもあるものですが、その差が非常に大きいために日常生活に支障を起こしている状態とも言うこともできます。

病気ではないため治療や根絶を目指すものではありませんが、支援が必要な特性をもっているため、その支援は一生涯に続きます。しかしながら、周囲の適切な理解、支援により社会生活上の困難は軽減することも可能です。

状態に応じて、大きくは次の三種類に分類されます。
発達障害

目次

注意欠如多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)

不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする障害のことで、育ちや親の影響とは関係なく、中枢神経(主に前頭前野)のはたらきの偏りが原因であると言われおり、国内における児童・生徒の約3%がADHDの疑いがあると言われています。(2012年の文部科学省による調査結果より)

ADHDは、突然発症するわけではありません。7歳以前(DSM-5では12歳以前)にあるという生育歴があり、かつ複数場面でADHDの症状が確認できてはじめて診断されます。ただし、診断できる年齢は4歳以降です。

DSMとは?
DSMとは、アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)が出版している、心の病気に関する診断基準のことです。正式名称を「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といいます。この頭文字をとって、DSMと略されます。現在は、2014年に改定された第5版が利用されています。(DSM-5)

ADHDの診断基準

DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断基準は下記です。

A1:以下の不注意症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は社会生活、学業あるいは職業に不適応的で、発達水準に相応しないもの(17歳以上の場合は5つ以上)

  • a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
  • b.注意を持続することが困難。
  • c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
  • d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
  • e.課題や活動を整理することができない。
  • f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
  • g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
  • h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
  • i.日々の活動を忘れがちである。

A2:以下の多動性-衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上持続したことがあり、その程度は社会生活、学業あるいは仕事に不適応的で、発達水準に相応しないもの(17歳以上の場合は5つ以上)

  • a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
  • b.着席が期待されている場面で離席する。
  • c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
  • d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
  • e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
  • f.しゃべりすぎる。
  • g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
  • h.順番待ちが苦手である。
  • i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

B:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在している。

C:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。

D:症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。

E:統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない

自閉症スペクトラム障害(ASD:Autism Spectrum Disorders)/広汎性発達障害(PDD:Pervasive Developmental Disorders)

「対人的コミュニケーションおよび対人的相互交流の障害」と「制限された反復的および常同的な興味および行動(こだわり、想像力の欠如の障害)」を主な特徴とする障害のことです。

一般的な特徴としては、

  • 人の気持ちを理解することが苦手
  • 空気が読めない
  • 非言語的なサインを読み取ることが困難
  • 特定の物事への強いこだわり
  • 視覚や聴覚、触覚などの感覚の過敏

などがあげられます。

DMS-5における診断基準

DSM-5における診断基準は下記です。

A 対人的コミュニケーションおよび対人的相互交流の障害(3項目すべてが該当)

  • 対人ー情緒的な相互性の障害:対人的アプローチが異常である、興味、情緒、感情、反応を他者と共有することの現象、正常な会話ができない、対人的相互交流を開始できない
  • 対人的相互交流のために用いられる非言語的コミュニケーション行動の障害:アイ・コンタクトやボディ・ランゲージの以上、あるいは非言語的コミュニケーションの理解や使用の障害、言語的および非言語的コミュニケーションから、表情や身振りの完全な欠如にまで及ぶ
  • 仲間関係の発展、維持、理解の障害:ごっこ遊びの共有や友人を作ることが難しい、社会的状況で適切にふるまうために行動を調整できない、人への関心の明らかな欠如

B 限局された反復する行動や興味(2項目以上が該当)

  • 情動的・反復的な言語、運動あるいは物の使用(例えば、単純な情動運動、エコラリア、おもちゃを並べる、あるいはその人独自の言いまわし)
  • 同じことへの固執、週間や儀式的パターンへの過度のこだわり(例えば儀式的動作、同じ道順や食べ物への要求、反復的な質問、ささいな変化に対する極度の苦痛)
  • 著しく限局的で固着した興味(例えば、普通ではないモノへの強い執着や没頭、極めて限局的あるいは固執的な興味)
  • 感覚刺激への過敏あるいは鈍麻、環境の感覚的側面に対する異常なほどの興味(例えば痛み/暑さ/冷たさに対する明らかな無反応、特定の音や感覚に対する拒絶反応、過度に物のにおいを嗅いだり、触ったりすること、光や回転する物体に対する没我的興味)

C 症状は児童期早期に存在しなければならない(しかし周囲からの社会的要求が能力の限界を超えるまでは完全に明らかにならないかもしれない)

D 症状によって社会的、職業的または他の重要な領域における機能が障害される

E 知的障害や全般的な発達の遅れでは説明ができない

学習障害(LD)

知的な発達に大きな遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」などの特定の分野の学習だけが極端に困難を伴う障害のことです。

単なる勉強のできなさや学習の遅れではなく、その背景に認知発達の部分的な遅れや偏りがあって学習の困難が生じていると推定される場合に診断されます。

また、学習障害(LD)には教育的な立場でのLD(Learning Disabilities)と医学的な立場でのLD(Learning Disorders)という2つの考え方が存在します。最近では、学び方の違いであるという解釈からLearning Differences(学びかたの違い)と呼ばれることもあります。

LDは大きく3つのタイプに分けることができます。

読みの障害(ディスクレイシア)

もっとも多いタイプであり、読字障害やディスクレシアと呼ばれます。
知的能力お呼び一般的な学習能力の脳内プロセスに特に異常がないにも関わらず書かれた文字を読むことができない、読めてもその意味がわからないなどの症状を言います。

書きの障害(ディスグラフィア)

読みには問題がなく、書字にのみ困難をもつ場合は、このように呼ばれます。
文字を書くのに時間がかかる、鏡文字や勝手文字などが見られます。

算数、推論の障害(ディスカリキュア)

暗算ができない、数や量の理解や関係がよく理解できない、図形や分数、少数、あるいは比例関係がわからない、文章題が解けないなど、算数領域で特有のつまずきや困難を示します。

LDの診断基準

教育支援体制整備のガイドラインによると、学校現場で専門家チームによって以下の4つの基準から総合的にLDの判断をするものとしています。他の発達障害と違い、医療的な観点だけではなく教育現場での判断の比重が高い点が特徴です。

1,知的能力の評価

個別式の知能検査の結果から全般的な知能の遅れがないことの確認や個人内の認知能力のアンバランスがあるかどうか

2,国語などの基礎能力の評価

定義にある、聴く、離す、読む、書く、計算する、推論するなどの基礎的学習能力に著しいアンバランスがあるかどうか

3,医学的な評価

主治医の診断書や意見書などが提出されている場合,学習障害を発生させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか。中枢神経系になんらかの機能障害があると推定されるかどうか。

4,他の障害や環境的要因で説明できないこと

参考

発達障害支援法
・最新 子どもの発達障害辞典 原仁 合同出版 2016年
・よくわかる発達障害 第2版 ミネルヴァ出版 2017年
資料1 LD,ADHD, 高機能自閉症の判断基準(試案),実態把握のための観点(試案),指導方法

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