【西出夫妻インタビューその1】アスペルガー症候群としての困りごとと生活がしやすくなるためのヒント:西出弥加さん

こんにちは。
就労支援員の田中です。

いつもは障害者雇用に関するコラムを連載しておりますが、今回からインタビュー記事の掲載も開始することとなりました!

第一弾として、昨年コンフィデンス日本橋でも講義をしていただいた西出ご夫妻(弥加さん、光さん)にインタビューさせていただきました。その様子を2回に分けて掲載していきます。

第一回目の今回は、西出弥加さん(以下:弥加さん)へのインタビューです。

弥加さんは発達障害であることを積極的に発信しながら、画家・グラフィックデザイナーとして活躍されており今回は、当事者としての捉え方や悩み事などについて伺いました。

 

西出弥加(にしで さやか)さんプロフィール
西出弥加
職業は画家・グラフッィクデザイナー。西出さんは「発達障害」を抱えている。アスペルガー症候群。自殺未遂とリストカットを繰り返した20代。当事者や親子向けの社会活動をライフワークとして、世界中で活動している。西出弥加ホームページ
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自身の障害について

-まずは、弥加さんの障害名と、ご自身が思う障害のイメージについて教えてもらってもいいですか?

弥加:自閉症スペクトラムでアスペルガー症候群です。 私の経験からですが、人と同じ空間に長時間いると疲れるイメージが強くあります。

-なるほど。どれくらいの時間だったら一緒にいられますか?

弥加:私はプライベートだと15分くらいは快適です。60分を超すと疲れてくるかも…。
ただ、これは私の場合なので、「アスペルガー症候群」だと言われている人の中にも、人づきあいが上手い人ももちろんいますよ。

コミュニケーションの取り方

-弥加さんが人とコミュニケーションを取る時は、どんなことを考えているんですか?

弥加:実は、基本的に雑談に興味がなくて。「お互いに金銭が発生してないのに、なぜ”長時間”話しているのか?」と思うくらいなんです。

「冷たい人!」と思われるでしょうから、普段言えませんが…。「長時間」というところがミソです。短時間であれば必要だと思っているのです。

-仕事上だと問題ないんですか?

弥加:はい、それなら長時間でもしたいです。意味があると思えますし、自己嫌悪にもなりません。基本的に金銭が発生してないのに自分の話を聞いてもらうなんて、相手に悪いと思ってしまうのです。

-なるほど。苦手なタイプの人とかいるのですか?

弥加:私が苦手なのは、社交辞令を言う人とイエスノーをハッキリ言わない人。そういう人が、とても多いと感じています。日本の世間で生き抜くためには必要なことなのだと思いますが、本音の部分をうまく隠しているところが怖いです。

そういうこともあって、グレーな感じが連続で起こっている「プライベート」は苦手ですね。

一人の時間をつくること

-ここまで話されていた人間関係での特性について、ご自身では、どのように向き合ってるんでしょうか?

弥加:一パソコンを使って一人で仕事しようという方向で落ち着きました。 決して無理はしないようにしようと。

-その場合、日常生活での人間関係はどうされるのですか?

弥加:ずっと聞き役になります、イエスマンのような感じでしょうか…。
ただ、それだとストレスが溜まっちゃうので、解消法として「人といない」状態をつくるようにしています。

人と会った後は、自分で喫茶店か公園か、漫画喫茶に行くか、NETFLIXで映画を何本も見てます。一人になれば、なんとか大丈夫。3日くらい一緒に居て大丈夫なのは、光くん(西出光さん:夫)だけかな。もっと一緒にいることはできるのですが、「絶対に大丈夫!」と言えるのは、日数では3日までかな笑。

0か100か、人との距離感

-アスペルガー症候群を抱えていての困りごとはなんですか?

弥加:人との距離感についてですね。私、人との微妙な距離感を保つことに興味がなくて…。他の方は、状況や関係性に応じて距離感が変わっていくのかもしれませんが、私は一定して「近い(0)か・遠い(100)か」。それしかないんです。

例えば、相手が70くらいの距離感で近寄ってきたとしても、私の中では0か100しかないので、相手は「なんか遠いな、冷たいな」か「この人、近い(笑)」か、どちらかの印象をもつと思います。

とりあえず今は、「0でも100でも、どちらにしても相手は困る」ということを経験したので、努めて空気を読んでいます。

-そうだったんですね。ちなみに、私との仕事のやり取りでは、その極端さを感じたことはないですよ。

弥加:それはよかったです。うまく読めているのかもしれないです。

自分を知るために、失敗をノートに書きためる

-そういった中で、状況をよりよくしていくためのコツみたいなものはあるんですか?

弥加:コツは失敗すること。そして、それをノートに書くことです。
そうすると、私は結構できない部分があるのだな、と気づきます。自分を客観視することが、そこからできるようになった感覚があります。

また、自分はどういう人間なのか知るために、いろんな発達障害の方のyoutubeやtwitterを見て、似ている価値観を見つけることもしています。

重要なのは、「自分にとっての」快と不快を知りつつ、不快を避けながら快でいられる人と努力していくことです。

-ノートに書いていくっていう行動が、 弥加さんに合っていたんですね。

弥加:私は、視覚から情報を取り込むのが優位なので、ノートに書くのがうまくいったんだと思います。
人によっては、視覚ではなく、聴覚、耳とかが強い人もいると思います。
その場合は音声録音が良いのかもしれません。tiktokやyoutubeで楽しみながらやっても良いかも。

-ノートには、具体的にはどんな内容について書いているのですか?

弥加: 「今日はこういうことで恋人が怒っていた」とか、失敗について日記のように書いてました。
そしたら「失敗パターンはここだ」と自分のクセを確認することができたんです。

一時期は、成功した体験についても書いてたんですけど、私には成功よりも、失敗を書いていたほうが、励みになって楽になれました。

当時は、翻訳者がほしかった。

-人づきあいをする上でこういうサポートがあったら嬉しいみたいなことありますか?

弥加:以前は、自分の独特な言い回しが多かったので、翻訳者がほしかったです。つまり、私の考えてることを誰かに通訳してくれる人。今は要らないです。理由は、今は私のパソコンが通訳者だからです。パソコンでデザインをしたり絵を描いているので、翻訳ツールになってくれています。

-例えば、どういうことが伝わらなかったですか?

弥加:言葉は全部伝わらなかったですね(笑)いつも自分の言いたいこととはズレた返答がくるので、私の「単語を選ぶ能力」「人に伝える能力」がなかったのかなと。ここ5年ほどは、映画を見たり一ヶ月に100人と会い続けることを続けてきているので、直ってきたはずです。多分…笑 。

-すごい!かなりの訓練を積んできているのですね。

弥加:そういえば大学時代に4年間、電話で話す仕事もしていました。他には塾講師とか。苦手なことをアルバイトで訓練してきた感じです。学校で教えてくれないことを、逆にお金をもらえる環境にいって学びました。お金をもらうということは怒られるから、身につくだろうと思いました。だから20代前半のバイト数としては、他の方よりも多いと思います。

-バイトいって、失敗して、ノートが溜まるほど、弥加さんのスキルは上がっていったと 。

弥加:そうです、一応あがりました。ただ、結構ボロボロになったし、そのやり方だと何年も続きませんでした。でも色んなことが平均値までできるようになった感覚はあります。

-そんな中、頑張ってこられたんですね。心の許容量が広いんだなと感じています。

弥加:広いところと狭いところが極端にあります。能力を円グラフにすると、正円ではなく、星みたいな感じです。例えば撮影現場でアシスタントをすることは苦手ですが、6時間休みなくデザインし続けることは全く苦じゃないです。

-伝わらないことで困っている人の翻訳者をするためのコツはあるのでしょうか?

弥加:行動や言葉節ではなく、心で捉えて解釈すること、最終的に言いたいことは何かということに気づくことですね。そこから逆算して、伝わりやすい単語を選ぶ。あとは困っている人と翻訳者の価値観が似ているかどうかが最重要だと思います。可能な限り、同じ事象に対して同じ気持ちになる人なのかどうか。

読んでる方へのメッセージ

-最後に、同じ特性の人に対して、メッセージを伝えるとすればどんなことを伝えたいですか?

弥加:早めに助けを求めたり、移動することがいいと思います。

「今日からがんばるぞ!」と決心するのも、とてもいいことなのですが、決心のみで環境が変わらないと発達障害の方にとっては辛い場合もあるのかなと思います。

環境よりも先に心だけ変えること、それをできる人とできない人がいると思います。私はできません。

例えば、骨を折ったときはギプスをしてその場で出来る限り治そうとします。
しかし発達障害の人の場合、ギプスをしながら歩くのではなくて、歩かなくても稼働できる環境に行くほうが良いのではないかと思っています。足を折ったら、頑張って松葉杖をついて動こうとするのですが、松葉杖もギプスも一旦取っ払って、その足のままできる環境でやれることをやったほうがいいと思っています。

そのままでいると周りが助けてくれる環境が見つかります。
無理しないほうがいい。
矯正するのではなく、自分からどんどん移動したほうがいい。

そうしていくうちに、動かなかった足が治っていた!気づいたら楽になってた!という体験を私はしてきました。

何度もいろんな人に相談してみて、一番しっくりくる人のところで、助けを求めて自分を救ったほうがいいなと思います。

うさぎは海で泳がないけど、草原を走れます。クジラは草原では生きていけませんが、大海を泳げます。人間にだって、ひとそれぞれ、自分にあう環境が必ずあるはず。

私はそう思います。

-弥加さん、ありがとうございました!

編集後記

今回は アスペルガー症候群の特性を持つ西出弥加さんにインタビューをさせて頂きました。インタビューではご自身の障害について、生活の困りごとについて、またどのようなサポートがあるといいのか、と言う観点でインタビューを実施しました。

インタビューの中で弥加さんは「環境」をキーワードとしていました。うまくいかないことがあったら、そこでどうにかしようではなく環境をとにかく変えることが大切であり、「よしここで頑張ろう」と言う決心は合う環境を見つけてからでも遅くは無い、ということを言っていました。その考えに至るには弥加さんなりの努力があったからこそだと思います。

弥加さん、ありがとうございました。次回は、光さんへのインタビューとなります。お楽しみに!

まずはお気軽にご相談ください。