はたして発達障害は増えているのか?

20年前には、まったく認知されていなかった「発達障害」という言葉が、現在では社会に広まりつつあります。以前、コンフィデンス日本橋では、発達障害用事者の方のインタビュー記事を掲載しました。

コンフィデンス日本橋 中央区日本橋の障害者就労移行・定着支援事業所

発達障害をもちながら、画家・グラフィックデザイナーとして活躍されている西出弥加さんへのインタビューです。アスペルガー症候群の当事者としての困りごとやスキルを高めていくための方法、同じ特性の方へのメッセージなど[…]

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こんにちは。 就労支援員の田中です。 インタビューの第二弾は、西出光さんにさせていただきました。 前回はこちら 光さんは、前回出演いただいた西出弥加さんの旦那さんであり、発達障害の当事者として、当事者 […][…]

インタビューの中では、障害にまつわる生活の困りごとや改善方法などを当事者の目線から紹介させていただきました。

今回のコラムでは、「発達障害」という言葉をもう少し俯瞰して、その概要や社会的な観点をまとめて記載したいと思います。

発達障害とは?

発達障害の定義

発達障害とは、発達障害者支援法の中で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

発達障害は神経発達のずれや脳の機能不全が原因であると考えられます。人間の発達は、一定の要件や基準によって同じように発達すると考えられていましたが、定型的な発達のルールや秩序から外れる神経発達症の方がいて、その層を総じて発達障害と呼んでいます。

現在も発達障害の原因についての調査、研究は積極的に行われております。遺伝子が主な要因であり、次いで妊娠中の環境も影響していると言われています。つまり、遺伝要因と環境要因が複雑に組み合わさっていることが原因であり、ワクチンや子育てが原因ではない、とも言われています。

発達障害は、後天的な病気ではなく、生まれつきの脳の発達が通常と異なるために症状が現れるのです。

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発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。障害の概要[…]

発達障害の社会的な背景

発達障害がある方の数

ASD(自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群)の方は近年の研究で全体の1%と言われています。100人いたら1人の計算です。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)の方は児童期には全体の5〜10%という見解があり、LD(学習障害)については、文部科学省の調査によれば4.5%と言われています。

専門家の中には日本人の10人に1人は発達障害の傾向がある、という見解を示す方もいます。ただし、あくまでもこの見解は「傾向」の話であって、10人に1人が発達障害である、と言った断定したものではありません。

厚生労働省は「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」により医師から発達障害と診断された方は、48万一千人と推計を発表しました。そのうち障害者手帳を持っている方の割合は、76.5%、手帳を持っていない方の割合は21.4%でした。

文部科学省が平成 24年2 月から3月までにかけて全国の公立の小学校及び中学校の通常の学級に在籍する児童生徒を対象として実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(平成24年12月文部科学省)の結果では、学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は 6.5%(推定値)となっていました。

6.5%(推定値)は、文部科学省が行った調査において担任教員が記入し、特別支援教育コーディネーター又は教頭(副校長)による確認を経て提出した回答に基づくもので、発達障害の専門家等による判断や、医師による診断によるものではありません。

また、同省が平成27年5月に公立の小学校、中学校及び中等教育学校 (前期課程)を対象として実施した「通級による指導実施状況調査」(平成28年5月公表)の結果では、通級による指導を受けている発達障害(自閉症、学習障害及び注意欠陥多動性障害)のある児童生徒数は、平成27年度(5 月 1 日時点)では4万1,986 人(自閉症1万4,189 人、学習障害1万3,188 人、注意欠陥多動性障害1万4,609 人)となっていました。これは、平成18年度の約6.1倍となっています。

発達障害の増加していると言われる背景について

発達障害の増加していると言われる背景の一つとして、発達障害の診断基準が変わったことが考えられます。
以前は広範性発達障害を上位概念として、自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の発達障害の下位概念が存在していました。しかし、DSM−5が発行されてから、軽度から重度までの状態をスペクトラム(連続性)としてとらえるASDの概念に統一されたため、今まで診断をしずらかった軽度の方も診断されるようになったと考えらられます。

DSMとは?
DSMとは、アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)が出版している、心の病気に関する診断基準のことです。正式名称を「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といいます。この頭文字をとって、DSMと略されます。現在は、2014年に改定された第5版が利用されています。(DSM-5)

発達障害の社会的な認知

「発達障害」めぐる社会的な認知には、下記のような流れがありました。

  1. 発達障害者支援法が2005年に施行
  2. 発達障害に関する書籍が増え、インターネット上でも言葉が溢れる
  3. 専門職を中心に発達障害の知識が社会に浸透し、早期発見の気運が社会に広がった
  4. 「大人の発達障害」「2次障害」というキーワードが目立ち始める

ここでは、重要な2つのキーワードから社会への影響をみていきます。

大人の発達障害

発達障害は、後天的な病気ではなく、生まれつきの脳の発達が通常と異なるために症状が現れます。発達障害は生まれつきの脳の機能不全が原因ではありますが、幼少期、学生時代に見過ごされ、社会人になってから発達障害が判明することがあります。

それを「大人の発達障害」と呼びます。なぜ、幼少期や学生時代に見過ごされるかというと、周囲の環境や人間関係によって、障害が表出されにくい状態であったことが考えられるためです。

2次障害

心の調子を崩しうつなどを疑い医療機関を受診したところ、その背景に発達障害があることがわかったケースを主に(発達障害の)2次障害と呼びます。

今では、発達障害の情報が溢れるようになりました。公務員の採用試験に出題されるようになり、芸能人でも発達障害であることを公表する方がいます。

発達障害を子どもの文脈で考えていくと、一昔前は「元気な子」「ちょっと変わった子」「少し落ち着きがない子」と、軽く扱われていたのが、今では、障害と結びつけられるような傾向にあります。この辺りの話は前述した発達障害の基準が広がったことが直に影響していると考えられます。

ここまで直接的な言い方はされないかもしれませんが、先生が「もしかしたら発達障害かもしれません、一度検査を受けたほうがいいかもしれません」と親御さんに伝えるケースも出てきました。親の世代も発達障害の知識が増えてきたことから、一昔前は、子どもが発達障害であると疑われたとき、病院へ行くことを拒む親が多かったようです。

しかし現在では、子どもが発達障害であると疑いがあると、すすんで病院へ診断を受けに行く傾向があるようです。この傾向は、インターネットで簡単に事前情報を得られるようになったことで予備知識があることが影響していると考えられます。

子どもが育てにくいと感じたら、ひと昔であれば、相談先は自分の親や保育園、幼稚園の先生、地域の保健師等と限られていましたが、今では気軽にインターネットで調べることができます。ただし、インターネットで調べたからといって発達障害が原因だったとわかるわけではありません。そのため、いまは疑わしきはすぐ病院ということで、診断に対するハードルが以前より格段に下がったと考えられます。

つまり、親の認知度が広まった背景も発達障害の増加の一要因であると考えられるといえます。

おわりに

発達障害は、近年に出てきた言葉です。

発達障害者支援法が2005年に施行されてから15年たちましたが、その間に言葉自体の周知が徐々に進みました。その間に発達障害の診断基準が変わったこと、発達障害の周知が進んだことによって、今まで障害と判定されなかった層が障害の認定を受けるようになった、と言われています。その文脈は、発達障害の数が増えた要因の一つになっていると考えられます。

発達障害自体の周知が進むと、家族や障害にかかわる専門職の言動が変わります。その一つが発達障害の早期発見に繋がっています。これは2次障害にならないための予防の動きでもあるように感じます。

ですが、この15年で発達障害に対しての人々の理解はすすんだと言えるのでしょうか?

発達障害に限らず、障害の知識があることと、その人を理解することは、別の文脈であると感じています。今現在、障害の知識は取得しようと思えばいくらでも取得できます。ただし、障害の表出の仕方は人それぞれです。

なぜならば、障害とはその人の中にあるのではなく、人と環境の間にある障壁のことを指しているからです。

その人を理解するためには、得た知識を鵜呑みにするだけではなく、その知識を活用しながら、一人一人としっかりと対話していく姿勢が重要になるでしょう。

この記事を書いた人

田中 佑樹(たなかゆうき)
大学卒業後、2008年に貿易会社に勤務。その後、2012年に一般社団法人障害者就労支援協会(就労移行支援事業所)で勤務を開始。障害のある方への就労支援をする傍ら、障害者雇用を始めようとしている企業に対して助言・サポートの実施。就労支援の現場では、知的・精神・発達・高次脳の方を担当し、企業就労に繋げる。就職後も当事者の家族や各支援機関との連携を大切にしながら、中長期の定着支援を実施。

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